自負と現実

知識労働者は、受けた教育水準の高さや収入の多さから、自分たちが弁護士、教師、医師、高級官僚などと同類だと自負する。たしかに知識労働者はみずからの意思と判断で動き、リーダーシップを発揮して報酬を得る。しかし、彼らの仕事は組織があってはじめて成立するものであり、上司の存在が必要である。その上司とは、彼らの仕事を計画し統制し評価する経営管理者である。
要するに、彼らはこれまでの熟練労働者の後継なのである。ここに「自負と現実」の格差が立ちはだかる。


7月12日日本経済新聞31面「知識労働者の葛藤」


ホワイトカラーは、自分の判断・思考で仕事をしているように見えるが、
実は組織に依存せざるをえない存在だと思う。
外見にだまされるな、本質を見ろということだ。Read Between the Line.
今の職場で、今の職務がどれだけできても、
そのことによって、以後、自分にとって歓迎すべき展開が保証されているわけではない。
組織の決定次第だ。
それにいらだち、そうであれば、目先のことだけ考えようという態度。
自分が今のままでは、職を失う可能性は無いと思っている、
しかしそこに夢も無いと思っている。

結局、彼らは人事部のいうとおりにしか職務をこなしてこなかった。
大学を卒業するときは僕と変わらない能力があったのに、
会社の人事部やあるいはその企業の方針に、
自分の人生を一任勘定してしまった。
他人任せの人生に成功はありえません。


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しかし、大組織でしか生きられない生物を、
いきなりハイリスクハイリターン*1の世界で生きさせるのは危険。
生きていけるかわからない。
それは責任持てないというわけです。
リスクをとる、哲学を押し通すにはそれなりの、準備・覚悟が要る。
資格というのは安全装置の一種です。大組織に入るのはゴムボートか。
安全装置が無い人を、ハイリスク/ハイリターンの世界に入れてしまうと、
高山病で死ぬかもしれない。
後は野垂れ死にということをしたくない、させたくないのが人の情です。
だから、そういう甘いやつはハイリスクハイリターンの世界には入れさせない。
自然と大組織にいるようになっているのです。

ちなみにインベストメント・バンクでは貧しい育ちの人間が勝ちます。
しぶとくて、タフだから。
同じ高学歴でも、最後は根性のあるヤツが勝つんです。
いい育ちの人間は途中でどこかにいなくなる。


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甘えた言い訳や、矛盾、何もしないという一番のリスク*2への無自覚。
そういうものが一掃されない限り、ハイリスクハイリターンの世界には出れない。
ハイリスクハイリターンの世界でなければ、
自分の頭で考え、自分の哲学で仕事をする機会はない。
自分の哲学で仕事ができないまま死ぬのはどうかと思います。
動機付けが外側にある状態では、やる意味がない。


やる意味が無いことをやっていると、
組織でどうせ一日10〜15時間を拘束されるなら、
より生涯給料が多いことの蓋然性が高い仕事がいいと考えるようになる。
この、一日10〜15時間を拘束や、所得税や、固定資産税、
スーツやYシャツ買う金、そういった固定費を、どう回収するかというだけ。
一任勘定しているため、ある種の絶望があって、
自分の行動によって金銭等の授受以外は発生し得ないという前提。
金銭以外の価値観が無いというのは、
援助交際するとかと同じ思考回路のようで笑えない。


そして、金銭の目的であるが、投資。投資信託。外貨預金。
投資でお金を増やしたい。そのためにお金を稼ぎたい。
投資でお金が増えたらどうするか、その増えた分を再投資する。
お金の目的は、もっと多くのお金。預金通帳上の出来事。
まったく生産的でない。


冷静に考えて、自分の考え方に、中途半端な甘えがあって、
それが自分を取り巻く現実の状態にうまく反映されているのだと思う。
これを「思考は現実化する」というのだろう。
収入がそこそこあっても、空しい人生はありうる。
自分の力でやっているというプライドはあっても、
他人に依存しているという状態もありうる。
逆に、ホワイトカラーでも、
Jean-Claud-Makinakaみたいなフィロソフィーで
仕事する状態もありうるはずじゃないか。


結局、根本的な人間性、生き方を見直さないと、もう長くないってことだ。
それを素直に受け入れることの痛みに耐えられるのかどうか?
今後の動向に目が離せない状況ですね。


(P)

*1:大組織にいればリスクは低いのか?という問題はある。基本的に参入障壁はないわけで、どんどん新卒が入ってきて追いかけてくる。実際全部で約30名で「少数精鋭」とか言ってたうちの部署に、今年は景気回復で5人も新人が入ってきた。このダイリューションで、俺の価値も急激に薄まったと感じた。

*2:ほかにやりたいこともやるべきことも無いとすれば、仮に成功確率が1/10000であったとしても、利益が出る可能性を追いかけたほうが、何もしないよりは期待値は高いはず